椎間板ヘルニアで足が痛いのはなぜ?その原因と痛みのメカニズムを徹底解説

椎間板ヘルニアで足の痛みに悩んでいませんか?
「なぜ足が痛むのか」
その疑問は、多くの方が抱えるものです。
この記事では、椎間板ヘルニアが足の痛みを引き起こすメカニズムや、その主な原因を分かりやすく解説します。
飛び出した椎間板が神経を圧迫し、炎症を引き起こすことが痛みの元となること、そして坐骨神経痛などの具体的な症状まで、あなたの足の痛みの正体を徹底的に明らかにします。
この記事を読めば、足の痛みの原因を深く理解し、今後の対処に役立つ知識が得られるでしょう。
1. 椎間板ヘルニアで足が痛いのはなぜ?その疑問を解決します
1.1 椎間板ヘルニアと足の痛みの関係性
「椎間板ヘルニアと診断されたけれど、なぜ足に痛みが出るのだろう」
と疑問に感じている方は少なくありません。
背骨のクッション材である椎間板に異常が生じる椎間板ヘルニアは、腰に痛みを感じるだけでなく、足にまで症状が及ぶことがあります。
足の痛みの主な原因は、飛び出した椎間板の一部が、近くを通る神経を圧迫したり、炎症を引き起こしたりすることにあります。
この神経の圧迫や炎症が、腰だけでなく、お尻や太もも、ふくらはぎ、足先といった下肢全体に、痛みやしびれといった不快な症状をもたらすのです。
特に、多くの方が経験されるのが「坐骨神経痛」と呼ばれる症状です。
椎間板ヘルニアによって坐骨神経が刺激されると、電気が走るような鋭い痛みや、ジンジンとしたしびれが足に現れることがあります。
この章では、椎間板ヘルニアが足の痛みを引き起こす基本的なメカニズムについて、その疑問を解消していきます。
1.2 この記事で分かること
この記事では、椎間板ヘルニアによる足の痛みに悩む皆様が、その原因や対処法を深く理解できるよう、以下の内容を詳しく解説していきます。
疑問点 | この記事で解決できること |
---|---|
椎間板ヘルニアとは何か? | 椎間板の基本的な役割と、なぜヘルニアが発生するのかというメカニズムを理解できます。 |
なぜ足が痛くなるのか? | 神経根の圧迫や炎症反応が足の痛みを引き起こす詳細なメカニズムを把握できます。 |
どのような症状が出るのか? | 坐骨神経痛をはじめとする、しびれ、感覚異常、筋力低下といった足の痛みの具体的な症状と特徴を知ることができます。 |
ヘルニアの場所と足の痛みの関係は? | 腰椎椎間板ヘルニアの発生部位(L4/L5、L5/S1など)が、足のどの部分に痛みを引き起こすかという関連性を理解できます。
重症化した場合の馬尾神経症候群についても解説します。 |
足の痛みがヘルニア以外の場合もある? | 脊柱管狭窄症や梨状筋症候群など、椎間板ヘルニア以外の足の痛みの原因となる疾患との違いや鑑別ポイントを学ぶことができます。 |
痛みを放置するとどうなる? | 足の痛みを放置した場合の症状の慢性化や悪化、日常生活への影響といったリスクを理解し、早期対応の重要性を認識できます。 |
痛みの原因を特定するには? | 画像診断や神経学的検査など、足の痛みの原因を特定するための診断方法について知ることができます。 |
これらの情報を通じて、ご自身の症状に対する理解を深め、適切なケアへと繋がる一助となれば幸いです。
2. 椎間板ヘルニアとは何か?その基本を理解する
2.1 背骨のクッション材 椎間板の役割
私たちの背骨は、多くの骨が積み重なってできています。
この骨と骨の間には、クッションのような役割を果たす組織が存在します。
それが椎間板です。
椎間板は、脊椎にかかる衝撃を吸収し、私たちが体を曲げたり伸ばしたりする際に、背骨がスムーズに動くのを助ける重要な働きをしています。
例えるなら、車が走行する際のサスペンションのようなものです。
椎間板は、主に二つの部分で構成されています。
中心部にあるゼリー状の「髄核」と、その髄核を包み込むドーナツ状の丈夫な「線維輪」です。髄核は水分を豊富に含み、高い弾力性を持っています。
この弾力性によって、椎間板は衝撃を効果的に分散させることができるのです。
しかし、椎間板も時間とともに変化します。
加齢や長年の負荷によって、髄核の水分が減少し、弾力性が失われやすくなります。
また、線維輪も徐々に硬くなり、ひび割れや亀裂が生じやすくなることがあります。
2.2 なぜ椎間板ヘルニアが発生するのか
椎間板ヘルニアは、前述した椎間板の構造に問題が生じることで発生します。
具体的には、椎間板の外側にある丈夫な線維輪が損傷し、その内部にあるゼリー状の髄核が線維輪の亀裂から外に飛び出してしまう状態を指します。
髄核が飛び出す原因は一つではありません。
複数の要因が組み合わさることで発生リスクが高まります。
- 加齢による変化:椎間板は加齢とともに水分が減少し、弾力性が低下します。これにより、線維輪が硬くなり、小さな負荷でも損傷しやすくなります。
- 身体への過度な負担:重いものを持ち上げたり、前かがみの姿勢を長時間続けたり、腰に繰り返し強い衝撃が加わるようなスポーツを行うなど、椎間板に持続的または瞬間的に大きな負担がかかることで線維輪が傷つきやすくなります。
- 不良姿勢:長時間のデスクワークやスマートフォンの使用など、日常的な姿勢の悪さも椎間板に偏った圧力をかけ、損傷の原因となることがあります。
- 遺伝的要因:体質的に椎間板が弱かったり、ヘルニアになりやすい傾向がある方もいらっしゃいます。
このように、椎間板ヘルニアは、椎間板自体の劣化と、日常生活における身体への負担が複合的に作用することで発生することが多いのです。
3. 椎間板ヘルニアによる足の痛みの主な原因
椎間板ヘルニアによって足に痛みが生じる主な原因は、大きく分けて二つあります。
一つは神経根が物理的に圧迫されること、もう一つは炎症反応が引き起こされることです。
これらのメカニズムが複合的に作用し、足の痛みを発生させたり、悪化させたりします。
3.1 神経根の圧迫が足の痛みを引き起こすメカニズム
椎間板ヘルニアが発生すると、本来、椎骨と椎骨の間にあるべき椎間板の髄核が、脊柱管内にはみ出してしまいます。
このはみ出した髄核が、脊髄から枝分かれして足へと向かう神経の根元、すなわち神経根を直接的に圧迫することがあります。
神経は、脳からの指令を筋肉に伝えたり、皮膚からの感覚を脳に伝えたりする重要な役割を担っています。
神経根が圧迫されると、これらの信号の伝達が妨げられたり、異常な信号が発生したりします。
これにより、足に痛み、しびれ、または感覚の異常といった症状が引き起こされるのです。
神経の圧迫の程度や部位によって、痛みの種類や範囲が変わってきます。
3.2 炎症反応が足の痛みを悪化させる
椎間板から飛び出した髄核は、本来、脊柱管内に存在しない異物と見なされます。
私たちの体は、異物が侵入すると、それを排除しようとする免疫反応を起こします。
この免疫反応の一環として、はみ出した髄核の周囲で炎症が引き起こされます。
炎症が起こると、その部位にはブラジキニンやプロスタグランジンといった、痛みを引き起こす化学物質が放出されます。
これらの化学物質は、周囲の神経根を刺激し、神経の感受性を高める作用があります。
つまり、神経がより小さな刺激でも痛みを感じやすくなる状態を作り出すのです。
この化学的な刺激による炎症反応は、神経根の物理的な圧迫と相まって、足の痛みをさらに強くしたり、持続させたりする要因となります。
4. 椎間板ヘルニアで足が痛いときの症状と特徴
椎間板ヘルニアによって足に痛みが生じる場合、その症状は多岐にわたります。
単なる痛みだけでなく、しびれや感覚の異常、さらには足の動きにくさといった症状を伴うこともあります。
これらの症状は、日常生活に大きな影響を及ぼすことがありますので、ご自身の症状を正しく理解することが大切です。
4.1 代表的な足の痛み 坐骨神経痛とは
椎間板ヘルニアによる足の痛みの代表的なものとして、坐骨神経痛が挙げられます。
坐骨神経は、腰からお尻を通り、太ももの裏側からふくらはぎ、そして足先へと伸びる、人体で最も太い神経です。
この坐骨神経が、飛び出した椎間板によって圧迫されたり炎症を起こしたりすることで、その神経が支配する範囲に痛みが生じます。
坐骨神経痛の痛み方は人それぞれですが、以下のような特徴が見られます。
- お尻の奥から太ももの裏、ふくらはぎ、足先にかけて広がる痛み
- 電気が走るような鋭い痛み
- 焼けるような、ジンジンとした痛み
- 重だるい、鈍い痛み
- ピリピリとしたしびれを伴う痛み
これらの痛みは、安静にしているときよりも、立っているときや座っているとき、歩いているときに悪化しやすい傾向があります。
また、咳やくしゃみ、前かがみになる動作などで、腰に負担がかかり、痛みが強くなることもあります。
4.2 しびれや感覚異常 足の感覚に異変が
椎間板ヘルニアでは、痛みだけでなく、足のしびれや感覚の異常もよく見られる症状です。
神経が圧迫されることで、脳からの指令が足にうまく伝わらなかったり、足からの感覚情報が脳に届きにくくなったりするためです。
しびれは、以下のような感覚として現れることがあります。
- 足がピリピリ、ジンジンする
- 砂利の上を歩いているような感覚
- 足に膜が張ったような、自分の足ではないような感覚
- 足の特定の部位だけが冷たく感じる、または熱く感じる
また、感覚異常としては、足の触覚が鈍くなることが挙げられます。
例えば、足の特定の場所を触っても、触られている感覚が薄かったり、冷たいものや熱いものに触れても、その温度が分かりにくかったりすることがあります。
これらの感覚異常は、足の裏や指先など、神経の走行に沿って現れることが多いです。
4.3 筋力低下や麻痺 足が動かしにくい症状
椎間板ヘルニアが進行し、神経への圧迫が強くなると、足の筋力低下や麻痺といったより深刻な症状が現れることがあります。
これは、神経が筋肉を動かすための信号を十分に伝えられなくなるために起こります。
具体的な症状としては、以下のようなものがあります。
- 足に力が入らない:階段を上るのがつらい、つま先立ちができない、片足立ちが不安定になるなど。
- 足首が持ち上がらない(下垂足):つま先が垂れ下がってしまい、歩くときに足を引きずったり、つまずきやすくなったりします。
- 足の指が動かしにくい:特に親指に力が入らないことがあります。
これらの筋力低下や麻痺の症状は、日常生活における歩行能力やバランス能力に大きな影響を与え、転倒のリスクを高めることもあります。
症状の進行度合いは個人差がありますが、足の動きにくさを感じ始めた場合は、早めに専門家にご相談いただくことをお勧めします。
5. 椎間板ヘルニアの発生部位と足の痛みの関連性
椎間板ヘルニアによる足の痛みは、ヘルニアが発生した部位によって、その症状の現れ方が異なります。
特に腰の骨である腰椎に椎間板ヘルニアが発生した場合、そこから出る神経根が圧迫されることで、足に特有の痛みやしびれが生じることが多くあります。
神経は脊髄から枝分かれして全身に広がり、それぞれ特定の部位の感覚や運動を司っています。
そのため、どの神経根が圧迫されるかによって、足のどの部分に症状が出るかが決まるのです。
5.1 腰椎椎間板ヘルニアが足の痛みの原因となる場合
腰椎は上からL1、L2、L3、L4、L5と番号がつけられており、それぞれの椎骨の間にある椎間板から神経根が出ています。
椎間板ヘルニアは、特に負担がかかりやすい下部の腰椎で発生することが多く、L4/L5間やL5/S1間で起こることが一般的です。
これらの部位でヘルニアが発生すると、足の痛みやしびれ、筋力低下といった症状を引き起こすことがあります。
5.1.1 L4/L5ヘルニアが引き起こす足の痛み
腰椎の4番目と5番目の間にある椎間板にヘルニアが発生した場合、主にL5神経根が圧迫されることが多いです。
L5神経根が圧迫されると、以下のような特徴的な足の痛みが現れることがあります。
- 痛み・しびれの部位
太ももの外側からすねの前側、そして足の甲から親指にかけて痛みやしびれを感じることがあります。足の甲全体がジンジンしたり、親指の感覚が鈍くなったりすることもあります。 - 筋力低下
足首を上に持ち上げる動作(足関節の背屈)が難しくなることがあります。これにより、歩行時に足の指が地面に引っかかりやすくなるなど、歩き方に影響が出ることがあります。
5.1.2 L5/S1ヘルニアが引き起こす足の痛み
腰椎の5番目と仙骨(お尻の骨)の1番目の間にある椎間板にヘルニアが発生した場合、主にS1神経根が圧迫されることが多いです。
S1神経根が圧迫されると、以下のような足の痛みが現れることがあります。
- 痛み・しびれの部位
お尻から太ももの裏側、ふくらはぎを通って足の裏、特に小指側にかけて痛みやしびれを感じることが多いです。足の裏全体がピリピリしたり、足の指の感覚が鈍くなったりすることもあります。 - 筋力低下
足首を下げる動作(足関節の底屈)が難しくなることがあります。つま先立ちがしにくくなったり、歩行時に足が地面から離れにくく感じたりすることがあります。 - 反射の変化
アキレス腱反射が低下したり、消失したりすることがあります。
これらの症状は、圧迫される神経根の部位によって異なるため、ご自身の足の痛みがどの部分に現れているかを確認することは、原因を特定する上で大切な手がかりとなります。
発生部位 | 圧迫されやすい神経根 | 主な痛み・しびれの部位 | 主な筋力低下 |
---|---|---|---|
L4/L5間 | L5神経根 | 太もも外側、すねの前側、足の甲、親指 | 足首を上に持ち上げる動作(足関節の背屈) |
L5/S1間 | S1神経根 | お尻、太もも裏側、ふくらはぎ、足の裏、小指側 | 足首を下げる動作(足関節の底屈)、つま先立ち |
5.2 重症化すると起こる馬尾神経症候群
椎間板ヘルニアが重症化し、ヘルニアが非常に大きくなったり、中央部分に発生したりすると、複数の神経根が束になった「馬尾神経」を広範囲に圧迫することがあります。
この状態を「馬尾神経症候群」と呼びます。
馬尾神経症候群は、通常の椎間板ヘルニアによる足の痛みとは異なり、より広範囲で重篤な症状を伴うことが特徴です。
- 両足のしびれや麻痺
片足だけでなく、両方の足に強いしびれや筋力低下が現れ、歩行が困難になることがあります。 - 排尿・排便障害
膀胱や直腸をコントロールする神経も馬尾神経に含まれるため、尿が出にくい、または漏れてしまう、便が出にくいといった排泄に関する問題が生じることがあります。 - 会陰部の感覚異常
お尻と性器の間、サドルにまたがるような部分(会陰部)に、しびれや感覚の鈍さを感じることがあります。
これらの症状は、神経に深刻な影響が及んでいる可能性を示しており、速やかな対応が求められる状態です。
もしこのような症状が急に現れた場合は、自身の状態をよく確認することが大切です。
6. 足の痛みが椎間板ヘルニア以外の原因である可能性
足の痛みやしびれは、必ずしも椎間板ヘルニアだけが原因ではありません。
症状が似ているため混同されやすい他の疾患も存在します。
ご自身の症状が椎間板ヘルニアによるものなのか、それとも別の原因によるものなのかを理解することは、適切な対処を考える上で非常に重要です。
6.1 脊柱管狭窄症との違い
脊柱管狭窄症もまた、足の痛みやしびれを引き起こす代表的な疾患の一つです。
椎間板ヘルニアと同様に神経が圧迫されることで症状が現れますが、その原因や症状の現れ方には明確な違いがあります。
椎間板ヘルニアは、椎間板が飛び出すことで神経根が圧迫されるのに対し、脊柱管狭窄症は、加齢に伴う骨や靭帯の肥厚などによって脊柱管(神経が通るトンネル)が狭くなることで神経全体が圧迫される状態を指します。
特に、中高年の方に多く見られる傾向があります。
症状の違いを理解するために、以下の表で比較してみましょう。
特徴 | 椎間板ヘルニア | 脊柱管狭窄症 |
---|---|---|
主な発症年齢 | 比較的若い世代から中高年まで | 中高年(50歳以上)に多い |
痛みの誘発動作 | 前かがみ、座る姿勢で悪化しやすい | 体を反らす、立つ、歩くことで悪化しやすい |
特徴的な症状 | 特定の姿勢での痛み、咳やくしゃみで痛みが響く | 間欠性跛行(かんけつせいはこう) |
間欠性跛行とは | 通常は見られない | 歩いていると足の痛みやしびれで歩けなくなり、少し休むとまた歩けるようになる状態 |
痛みの原因 | 飛び出した椎間板による神経根の圧迫、炎症 | 脊柱管の狭窄による神経全体への圧迫 |
特に、間欠性跛行は脊柱管狭窄症に特徴的な症状であり、椎間板ヘルニアではあまり見られません。
もし歩行中に足の痛みやしびれで休憩を挟まなければならないようでしたら、脊柱管狭窄症の可能性も考慮に入れる必要があります。
6.2 梨状筋症候群との鑑別
梨状筋症候群も、足の痛み、特にお尻から太ももの裏側にかけての痛みを引き起こすことがあります。
この症状は椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛と非常に似ているため、鑑別が難しいケースも少なくありません。
梨状筋は、お尻の深部にある筋肉で、この筋肉のすぐ下を坐骨神経が通っています。
梨状筋が何らかの原因で硬くなったり、炎症を起こしたりすると、坐骨神経を圧迫して痛みやしびれを引き起こすことがあります。
これが梨状筋症候群です。
椎間板ヘルニアとの主な違いは、痛みの原因が腰の骨や椎間板ではなく、お尻の筋肉にあるという点です。
症状としては、お尻の痛みや足のしびれ、特に座っている時や股関節を外側にひねる動作で痛みが強くなる傾向があります。
椎間板ヘルニアでは腰をかがめる動作で痛みが増すことが多いのに対し、梨状筋症候群ではお尻や股関節の特定の動きで症状が悪化しやすいのが特徴です。
6.3 その他の疾患による足の痛み
足の痛みやしびれは、上記以外にもさまざまな原因で発生する可能性があります。
ここでは、いくつかの代表的な疾患をご紹介します。
- 血管性の問題(閉塞性動脈硬化症など)
足の血管が狭くなったり詰まったりすることで、血流が悪くなり、足に痛みやしびれが生じることがあります。特に、歩行時にふくらはぎなどが痛み、休むと改善するという「間欠性跛行」の症状が見られることがあります。脊柱管狭窄症による間欠性跛行と症状が似ているため、鑑別が重要です。 - 神経系の問題(糖尿病性神経障害など)
糖尿病などの疾患が原因で、足の末梢神経が損傷し、しびれや痛み、感覚の異常を引き起こすことがあります。両足に症状が出ることが多く、ピリピリとした痛みや灼熱感、冷感などを伴うことがあります。 - 関節の問題(股関節症など)
股関節や膝関節などの関節に問題がある場合、その痛みが足に放散することがあります。特に股関節の疾患では、お尻や太ももの前側、膝のあたりに痛みを感じることがあり、進行すると足を引きずるような歩き方になることもあります。 - 筋・筋膜性の問題(筋筋膜性疼痛症候群など)
特定の筋肉にできた「トリガーポイント」と呼ばれる過敏な部分が、離れた場所に痛みやしびれを引き起こすことがあります。腰やお尻、太ももの筋肉の緊張が、足の痛みとして感じられるケースです。 - 腫瘍性の問題
非常に稀ではありますが、脊椎や神経、あるいは足の骨などにできた腫瘍が神経を圧迫したり、直接痛みを引き起こしたりすることがあります。安静にしていても痛みが持続する、夜間に痛みが強くなるなどの特徴が見られることがあります。
足の痛みは、これらの疾患以外にも様々な原因が考えられます。
ご自身の症状がどのような原因で起こっているのかを正確に把握するためには、専門家による詳細な評価を受けることが大切です。
自己判断せずに、適切なアドバイスを求めるようにしてください。
7. 椎間板ヘルニアによる足の痛みを放置するリスク
椎間板ヘルニアによって引き起こされる足の痛みは、適切な対応をせずに放置すると、さまざまな深刻なリスクを伴います。
単なる不快感として軽視してしまうと、症状は悪化の一途をたどり、日常生活に大きな支障をきたす可能性が高まります。
7.1 症状の慢性化と悪化
足の痛みを放置する最大のリスクの一つは、症状が慢性化し、さらに悪化してしまうことです。
椎間板ヘルニアによって神経根が圧迫され続けると、その部分の神経に持続的なダメージが加わります。
急性期の痛みは適切な処置によって改善が見込めますが、放置することで神経への負荷が蓄積され、痛みが慢性的なものへと変化するのです。
慢性的な痛みは、身体だけでなく精神的な負担も増大させます。
常に痛みを抱えている状態は、ストレスや不眠の原因となり、生活の質を著しく低下させることにつながります。
また、しびれや感覚異常といった神経症状も進行する可能性があります。
足の感覚が鈍くなったり、冷感や灼熱感を感じるようになったりすることもあります。
さらに、神経の圧迫が長期間に及ぶと、足の筋力低下や麻痺が進行し、場合によっては不可逆的な状態になるリスクも高まります。
これは、一度損傷した神経が本来の機能を回復することが難しくなる状態を指し、歩行困難や日常生活動作の大きな障害につながるため、早期の対応が極めて重要です。
7.2 日常生活への深刻な影響
椎間板ヘルニアによる足の痛みを放置することは、日常生活のあらゆる側面に深刻な影響を及ぼします。
身体的な痛みは、日々の活動を大きく制限し、生活の質(QOL)を著しく低下させてしまうのです。
まず、歩行が困難になったり、長時間立ったり座ったりすることが辛くなるため、通勤や家事、買い物といった基本的な動作にも支障が出ます。
これにより、活動範囲が狭まり、外出を避けるようになるなど、社会参加の機会が減少する可能性があります。
次に、痛みによって夜間の睡眠が妨げられることも少なくありません。
慢性的な睡眠不足は、疲労感の蓄積や集中力の低下を招き、日中の活動効率を大きく低下させます。
また、常に痛みがあることで、気分が落ち込みやすくなり、ストレスや不安、時には抑うつ状態を引き起こすこともあります。
趣味や人との交流を楽しむことが難しくなるなど、精神的な健康にも悪影響を及ぼすことがあります。
仕事への影響も避けられません。痛みが原因で業務に集中できなかったり、特定の姿勢を維持することが困難になったりすることで、業務効率が低下します。
場合によっては、休職せざるを得なくなったり、職種変更を余儀なくされたりすることもあり、経済的な負担が増大する可能性も考慮しなければなりません。
このように、椎間板ヘルニアによる足の痛みを放置することは、単に身体的な不快感にとどまらず、個人の生活全般にわたる深刻な影響をもたらすリスクがあることを理解しておく必要があります。
8. 椎間板ヘルニアによる足の痛みの原因を特定する診断
足の痛みが椎間板ヘルニアによるものなのか、その原因を正確に特定することは、適切な対処法を見つける上で非常に重要です。
専門家は、様々な検査を組み合わせて、症状の根本的な原因を突き止めます。
8.1 画像診断 MRIやレントゲン検査
椎間板ヘルニアが疑われる場合、まず行われるのが画像診断です。
これは、足の痛みの原因が本当に椎間板ヘルニアにあるのか、あるいは他の疾患が隠れていないかを確認するために非常に重要です。
8.1.1 レントゲン検査
レントゲン検査は、主に骨の構造や配列、椎間板の隙間の状態などを確認するために用いられます。
椎間板ヘルニア自体が直接レントゲンに映ることはありませんが、脊椎の変形や骨棘(こつきょく)の有無、脊柱の湾曲など、ヘルニア発生の背景にある可能性のある骨格的な問題を把握するのに役立ちます。
また、骨折や腫瘍など、他の重篤な疾患を除外するためにも重要な検査です。
8.1.2 MRI検査
MRI(磁気共鳴画像)検査は、椎間板ヘルニアの診断において最も有用性の高い画像診断とされています。
レントゲンでは見えない軟部組織、特に椎間板や神経、脊髄の状態を詳細に映し出すことができます。
- 椎間板の突出や膨隆: ヘルニアの大きさや突出の方向、神経への圧迫の程度を正確に把握できます。
- 神経根の圧迫: どの神経根が圧迫されているのか、その位置と程度を明確に確認できます。
- 炎症の有無: 神経周囲の炎症反応や、椎間板自体の変性の状態も評価できます。
- 他の疾患の除外: 脊柱管狭窄症や脊髄腫瘍など、足の痛みを引き起こす可能性のある他の疾患との鑑別にも役立ちます。
MRI検査によって、足の痛みが椎間板ヘルニアによって引き起こされているのか、そしてそのヘルニアが神経にどの程度影響を与えているのかを、視覚的に確認し、診断の精度を高めることができます。
8.2 神経学的検査と問診
画像診断と並行して、専門家による丁寧な問診と神経学的検査が行われます。
これらは、症状の具体的な特徴を把握し、画像診断の結果と照らし合わせることで、より正確な診断へと導くために不可欠です。
8.2.1 問診
問診では、足の痛みがいつから始まったのか、どのような時に痛みが強くなるのか、しびれや脱力の有無、痛みの性質(鋭い痛み、鈍い痛みなど)、日常生活での支障の有無など、症状の詳細を丁寧に伺います。
また、過去の病歴や生活習慣なども確認し、総合的に判断するための情報収集を行います。
8.2.2 神経学的検査
神経学的検査は、神経のどの部分が障害されているかを推測し、足の痛みの原因が椎間板ヘルニアによるものかを判断するための重要な診察です。
専門家が直接、身体の反応を確認します。
検査の種類 | 目的 |
---|---|
筋力検査 | 足の指、足首、膝などの筋力低下の有無を確認します。
特定の筋肉の弱さは、どの神経根が圧迫されているかを示唆します。 |
感覚検査 | 触覚、痛覚、温冷覚などの異常の有無を評価します。
しびれや感覚鈍麻の範囲を特定することで、神経の障害部位を絞り込みます。 |
反射検査 | 膝蓋腱反射やアキレス腱反射など、特定の部位の反射を確認します。
反射の低下や消失は、その反射に関わる神経の障害を示唆します。 |
SLRテスト(下肢伸展挙上テスト) | 仰向けに寝た状態で、膝を伸ばしたまま足をゆっくりと持ち上げます。
この際に坐骨神経領域に痛みが誘発される場合、坐骨神経の圧迫や炎症が強く疑われ、椎間板ヘルニアの可能性を示唆する代表的な検査です。 |
FNSテスト(大腿神経伸展テスト) | うつ伏せに寝た状態で、膝を曲げてかかとをお尻に近づけます。
この際に大腿前面に痛みが誘発される場合、大腿神経の障害、特に高位腰椎のヘルニアの可能性を評価します。 |
これらの問診と神経学的検査、そして画像診断の結果を総合的に判断することで、足の痛みの根本的な原因が椎間板ヘルニアによるものなのか、そしてその状態がどの程度であるのかを正確に特定し、その後の適切な対処法へと繋げていきます。
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9. まとめ
椎間板ヘルニアによる足の痛みは、飛び出した椎間板が神経根を圧迫したり、その周囲に炎症を引き起こしたりすることが主な原因です。
特に坐骨神経痛として知られる痛みやしびれ、感覚異常、筋力低下などが代表的な症状として現れます。
ヘルニアの発生部位によって、足のどの部分に症状が出るか特徴があり、放置すると症状が悪化し、日常生活に深刻な影響を及ぼすリスクがあります。
足の痛みの原因を正確に特定するためには、MRIなどの画像診断や神経学的検査が非常に重要です。
何かお困りごとがありましたら当院へお問い合わせください。
柔道整復師 武田和樹 監修