【スポーツ後に膝の内側に痛みが出たら読んでください】鶩足炎の症状と治療法について
オーバートレーニング、膝関節外反外旋などの不良肢位などで、
膝の内側を通る薄筋、半腱様筋、縫工筋(鵞足)に炎症を起こすのが鶩足炎です。
今回はそんな鶩足炎について詳しく紹介していきます。
鶩足炎とは
鵞足炎は「鵞足(がそく)」と呼ばれるひざの内側下方の脛骨の周囲に炎症が起きる病気です。
「鵞足」とは、脛骨(膝から5-7㎝ほど下)に位置し、縫工筋、半腱様筋、薄筋と呼ばれる筋肉の腱の付着部です。
この部位にある滑液包に炎症が生じる状態が鵞足炎です。
滑液包は関節に存在するゼリー状の袋に少量の液体が含まれているものです。
骨と軟部組織の間にあり、摩擦を軽減するクッションとなります。
鵞足炎は膝の屈曲や股関節の内転動作の繰り返しによって、クッションとなる滑液包がすり減り、慢性的な痛みが生じます。
スポーツ選手が発症しやすく、スポーツ未経験でも打撲などの外傷を機に発症することもあります。
鶩足炎の症状
鵞足炎では膝の内側下方5-7㎝ほどの場所に腫れや圧痛、熱感などを感じます。
運動時や階段を下る時、歩く動作をした時に痛みが増幅します。
症状が進行すると、安静時でもうずくように痛くなったり、自発痛が生じるようになります。
炎症が悪化している時は熱感や発赤が生じ、毛細血管が拡張して数が増幅します。
毛細血管が余計に増えると、神経も一緒になって増えるため、炎症部が過敏になります。
炎症部が過敏になることで少しの刺激や、刺激が無くて安静時でも強い痛みが出るのです。
鶩足炎の原因
鵞足炎は鵞足にある滑液包の炎症(滑液包炎)であり、滑液包炎は摩擦の繰り返しとストレスによって発症します。
特に膝の屈曲や内旋動作の際に鵞足へ大きな負担がかかりやすいです。
鵞足炎は、スポーツを活発に行うを競技者の中でも、
特に縫工筋、半腱様筋、薄筋と呼ばれる鵞足部の筋肉が硬くなりやすいです。
変形性膝関節症の人にもよく見られ、打撲のような外傷も鵞足炎を発症するきっかけとなります。
鶩足炎の原因となる要因
- 不適切なトレーニング
- ストレッチを怠る
- 急な坂道のランニング
- 走行距離の急激な増加
- ハムストリングの硬さ
- 肥満
- 内側半月板損傷
鶩足炎の診断
鵞足炎の診断はまずスポーツを行っているかどうかや打撲の既往などの病歴の聴取をします。
次に鵞足部に圧痛や腫脹、熱感が生じているかどうかの身体所見、レントゲン検査で変形性関節症の有無や疲労骨折の有無、
MRIや超音波装置で軟部組織の腫脹などを観察して診断します。
鵞足炎は内側側副靭帯の損傷などの類似した病気の鑑別も必要となってきます。
鶩足炎の治療
鵞足炎の治療は理学療法、投薬や注射などの保存的な療法が一般的です。
理学療法
理学療法では、鵞足炎の場合は大腿部の筋肉が硬くなると膝の症状が悪化するため、
ストレッチで筋肉の緊張を和らげることがポイントです。
注意点は炎症や痛みが強い時にストレッチを過剰に行うと、逆に膝の痛みが悪化しかねないことです。
保存療法
症状がひどい際には軽めのストレッチに留めておきましょう。
十分に安静し、患部のアイシング、湿布を貼る、外用消炎剤を塗布する、消炎鎮痛剤を服薬するなどの保存療法を行います。
テーピング
鵞足炎に対する理学療法の一つにテーピングや、サポーターがあります。
膝関節を少し曲げながら股関節をやや内側に保持した状態で伸縮性のあるテーピングを貼付したり、サポーターを用いることで
膝関節部における内側方向の動作を物理的に制限することができ、鵞足部への負担を減らせます。
ステロイド注射
患部安静、局所的アイシング、抗炎症薬の使用などの保存療法や理学療法を実践しても症状が改善しない場合は
滑液包の内部に少量ステロイド薬を直接注射する治療もあります。
ステロイド注射は注射後すぐに症状が軽快することが多いですが、数か月経つと膝の痛みが再発する可能性があるので注意しましょう。
痛みが生じると身体を動かさなくなり、運動量が減ると体重が増加していきます。
体重が増加すると膝に数倍の付加がかかり、症状が悪化してしまいますので、予防も含めて体重を減らしていきましょう。
鶩足炎のリハビリテーション
鶩足炎のリハビリテーションは筋力トレーニングとバランストレーニング、ストレッチが有効です。
筋力トレーニングは膝周囲筋を強化して、膝関節の負担を軽減します。主に大腿四頭筋を鍛えていきます。
バランストレーニングは膝関節を安定させるために、バランス力をアップさせるトレーニングを行います。
片足立ちやバランスボールを使ったトレーニングなどで、バランス力アップを図ります。
ストレッチは 膝周囲筋や靭帯を柔らかくするために、太ももの前後や内側の筋肉を重点的にストレッチします。
鶩足炎でやってはいけないこと
鶩足炎でやってはいけないことは2種類あります。
痛みのある部分をマッサージする・温める
痛みのある部分をマッサージしたり、温めると炎症がさらに強く出てしまうので、やってはいけません。
湿布を貼って、そのままにしておくのも良くありません。
長時間の立ち仕事や歩行
長時間の立ち仕事や歩行は鶩足炎を悪化させてしまいます。
痛みを感じる長時間の立ち仕事や歩行は避け、適度な休息を取りながら鶩足炎を悪化させないように注意しましょう。
鶩足炎の予防
鵞足炎は太ももの筋肉が硬くなることで症状が悪化するので、ストレッチで筋肉の緊張を弱めることが効果的です。
ただし、炎症や痛みの強い時にストレッチを繰り返し行うと、逆に症状が悪化することがありますので、
ストレッチは軽く行い、局所を安静にして、アイシングや概要消炎剤の塗布、消炎鎮痛剤の投与などを併用していきます。
大腿後面のストレッチ
- 片脚を伸ばし、もう一方はあぐらをかくように膝を曲げて床に座ります。
- 伸ばした側の足先を両手で触るように体を前にゆっくりと倒していきます。
- すると太もも後ろ側の筋肉の一部が伸びて張りを感じると思います。
- この状態で15秒伸ばします。強く痛みを感じるようであれば、伸ばしている側の膝を少し曲げて行ってください。
太もも内側の筋肉のストレッチ
- 大腿後面のストレッチと同様の姿勢で座ります。
- 伸ばした側のつま先を内側に倒します。
- その状態から、伸ばした側の足先を両手で触るように体を前にゆっくりと倒していきます。
- すると①よりも内側の筋肉の一部が伸びて張りを感じると思います。この状態で15秒伸ばします。
テーピング
動作時に膝関節が足関節より内側にならないようになり、鵞足部への負担を軽減することが可能です。
- 膝関節を少し曲げ、股関節を少し内側にした状態で貼ります。
- 伸縮性のあるテーピングを使用します。
- 膝下の前内側から膝関節内側を通り、太もも1/2の内側まで貼ります。
- このように貼ることで膝関節の内側方向への動きを制限することができます。
- もう少しテーピングの強度を上げたい場合は、テーピング幅の半分ほど位置をずらして貼るようにしてください。
- 踵(かかと)が内側に倒れないように誘導するテーピングも有効です。
- 外側のくるぶしの下から踵に向かって斜めにテーピングを貼り、踵の後ろ側を通って、
内側のすねの真ん中くらいの位置まで貼ります。。
柔道整復師 武田和樹 監修